実際に見たことはないですが……
電車に乗って、ぼんやりと中吊り広告を見ておりましたら、ある女性週刊誌の広告に、さる女性皇族の方について「姫さまオーラ翳らす」と大きく出ているのが、目に留まりました。その女性皇族の方の身の上が心配なのはもちろんですが、漢字の使い方も、大いに目を惹いたのです。
「翳」は、現在では「かげる」と訓読みして使いますが、もともとは、鳥の羽で作った大きな日よけとかうちわなどを指していました。下半分に部首「羽」が付いているのは、その名残です。
この日よけとかうちわなどは、身分の高い人が使った、ゴージャスなもの。日光を遮る役割はもちろんですが、高貴なお姿を直接、人目にさらさないために用いられることもあったようです。
ぼくはテレビや映画でしか見たことがありませんが、社交界などという世界では、豪華に着飾った女性が鳥の羽でできた大きなうちわを手にしていらっしゃるとか。それで顔を隠しながら、おそばの者と何やらひそひそとお話をしていらっしゃるのだとか……。
「翳」は、今風に言えば、そんなイメージを持つ漢字。そこから、「日が当たらなくなる」「暗く見えにくくなる」というような意味で使われるようになったわけです。
とすれば、「姫さまオーラ翳らす」とは、なんとも適切な「翳」の使い方ではないでしょうか!
ただ、気になるのは、「翳」はけっこうむずかしい漢字です。そのまま広告に使って、大丈夫なのかなあ。万一、きちんと読んでもらえなかったら、宣伝効果も半減だものなあ。
そう思いながら、帰宅後、新聞をめくっておりましたら、同じ女性週刊誌の広告を発見。こちらは、「翳」に小さく、「かげ」とルビが付けてあるではありませんか!
新聞広告だからルビを付けたのかどうかはわかりませんが、ひと安心した次第でした。
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コメント
勉強になりました。
私は、てっきりオーラにかげが見え始め、今までの輝きが失せつつある、ということを伝えたい見出しなのかと思ってしまいました。
うちはといえば、諸葛孔明を思い出しますけど、皇室の女性がお持ちになるのは、どんなうちはなのでしょう・・・この場合は、ご自分では手になさらないで、おそばの者が風を送ったりするのでしょうか?
私も見たことがないので、一度羽のあるうちはを見てみたいような気がしました。
投稿: みのり | 2015年6月12日 (金) 05時51分
みのりさん、いつもありがとうございます。
見出しとして伝えたいことは、おっしゃる通りだと思いますよ。ただ、それを「漢字の成り立ち」という観点から見ると、ちょっとおもしろい見方もできる、というわけでして……
孔明さんとは、シブイですねえ!
女性のうちわは、タカラヅカの女優さんが、レビューで大階段を降りてくるときにお持ちかもしれないです。
投稿: 円満字 二郎 | 2015年6月13日 (土) 08時07分
リコメを拝読し、また私のコメントのミスに気が付きました!うちは、ではなく、うちわでした。漢字が書けないことは自覚しておりましたが、ひらがなも満足に書けないなんて、ショック!!
書けば書くほど、ボロが出ますのでこの辺に致しますが、谷崎潤一郎の『陰翳礼讃』を読もうとしたことがございますので、翳は読むことはできました・・・
投稿: みのり | 2015年6月13日 (土) 16時31分