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2015年3月 6日 (金)

海の底に眠る歴史

 先日、テレビを見ていたら、第二次世界大戦中に撃沈された日本海軍の戦艦「武蔵」の船体が発見された、というニュースが流れました。見つけたのは、マイクロソフトの創業者の1人なのだそうで。自国の戦艦ならともかく、他国の船を深さ1000メートルの海底まで探しに行こうというのは、ものすごい思いですよね。

 それだけ、沈没船というものが、あるいは海というものが、ロマンをかき立てるということなのでしょうか。  ニュースでは、バルブのところに「開」だとか「主弁」だとかと読める漢字が書かれているのが、この船体が「武蔵」であることの証拠の1つなのだ、とも言っていました。でも、あれっ、その「弁」の字は、新字体だよなあ……

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 現在、私たちがふつうに使っている「新字体」とは、第二次世界大戦後の1949(昭和24)年に制定されたもの。それ以前に使われていた漢字は「旧字体」といって、たとえば「安全弁」の「弁」ならば、旧字体は「瓣」となります。もっとも、「弁」は新字体としては特殊な例で、「弁護士」の場合は旧字体は「辯」となり、「弁理士」の場合は「辨」となります。

 となると、1940(昭和15)年に進水して、1944(昭和19)年に撃沈された「武蔵」に、新字体の「弁」が使われていていよいものか? すわ、一大事、これは壮大なCGなのか!

 と色めき立ってしまったのですが、現実はそう単純なものでもありません。

 新字体の中には、それ以前から使われていた略字の類を、正式なものとして採用した例が数多く含まれています。「瓣」の代わりに「弁」を用いるというのも、調べてみると、1923(大正12)年に臨時国語調査会が発表した『常用漢字表』の「略字表」に、すでにその例がありました。

 となれば、戦艦「武蔵」のバルブのところに「弁」が使われていても、別に不思議はないわけで。むしろ、「字体」の歴史を、生々しく伝えてくれているのかもしれません。

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