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2013年12月 1日 (日)

主人公はだれなのか?

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 目白の界隈を歩いていて、ふと眼にとまったこの看板。「飛び出し」の送りがな「び」を省略するのは、いわゆる「許容」とされている書き方ですが、改めてこう書かれると、「飛出」の2文字で熟語のように見えなくもありません。

 そこで、ふと頭をよぎったのが、この場合の「飛」はどういう意味なんだろうか、という疑問でした。

 すぐに思いつくのは、「すばやく、勢いよく」という意味。「現場に飛んでいく」「全国各地を飛び回る」の「飛ぶ」も、ほぼ同じだと考えていいでしょう。

 ただ、「飛び抜けた成績」になると、「すばやく」とはちょっと異なるような気もします。「順番を飛ばす」「記憶が飛ぶ」「飛び地」といった例も考えると、「全体の中でそれだけが別である」というような意味合いだと考えると、よく当てはまるような気がします。

 まあ、その当否はともかくとして、漢和辞典編集者として考え込んでしまうのは、上記のような意味を、漢和辞典にどう記述すればいいか、ということです。

 「すばやく、勢いよく」という意味は、「飛脚」のような例もありますので、漢字「飛」が元から持っている意味だとして問題はなさそうです。

 一方、「全体の中でそれだけが別である」の方は、はたして漢字「飛」の意味だといえるのかどうか。これは、あくまで日本語「とぶ」の意味であって、それがたまたま漢字「飛」を使って書き表されているだけだ、ということもできるでしょう。

 それは、たとえば、中国ではナマズを指している「鮎」が日本語ではアユを表す、といった例とは、質が少し異なるような気もします。「鮎」という漢字は単独でアユを指し示せるのに対して、「飛」は何かと結び付かないと「全体の中でそれだけが別である」という意味になることはないからです。

 漢和辞典とは、漢字が主人公の辞典です。その中で、こういった用法をどのように記述していくのか。 

 目白界隈を歩きながら、なかなかむずかしい問題だなあ、と頭を抱えたのでした。

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