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2013年7月 5日 (金)

ありえないから、おもしろい!

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 時々、思い出したように読んでみたくなるミステリ作家。それが、不可能犯罪の巨匠、ジョン・ディクスン・カーであります。先日も、駅前の小さな書店で、ふと『蠟人形館の殺人』(和爾桃子訳、創元推理文庫、2012年)を見つけて、なんとはなしに買い求めてしまったのでした。

 高校生のころから、『赤後家の殺人』『皇帝のかぎ煙草入れ』『三つの棺』『ユダの窓』などなど、名だたる作品は読んできています。今さら、それらを超える驚きが待っているはずもないでしょう。実際のところ、勢い込んで読み始めたものの、終わってみての感想は正直言ってイマイチ、という作品も少なくありません。

 それでは本作はどうかというと、1930年代のパリ、薄暗い蠟人形館の片隅から、若い女性の刺殺死体が転がり出る、という発端の雰囲気には、拍手喝采。それが中盤になると、いわゆる「闇の帝王」みたいな人物が現れ、上流階級の乱交クラブのようなものまで登場して、なにやらあやしい雲行きに。おもしろくないわけではないのですが、やっぱりあまりにもリアリティに欠けるよなあ、などとつぶやきながら、ページをめくるはめとなりました。

 ところがところが、ラストに至って、その評価は一変! 意外な犯人もさることながら、電話を通じての最後の対決は、ものすごい迫力。そして、衝撃的なラスト。こういう物語は、リアリティなど無視してかからなくては成立しません。カーの「ありえない」世界は、それはそれでやっぱり魅力的なのだなあ、と感じ入った次第でした。

 それにしても、80年ほども前に出版されたこういう作品が、きちんと新刊の文庫で読めるというのは、なんとありがたいことでしょう。日本の出版界も、まだまだ捨てたものではありませんね。

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