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2013年2月16日 (土)

社外秘だなんて言わないで

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 近年、出版社の編集者が主人公になったドラマやマンガ、小説などはたくさんあって、その端くれをやっている人間としては、なにやら面はゆいような思いをすることがあります。その中で、大崎梢さんの『平台がおまちかね』(創元推理文庫、2011)は、出版社の営業マンが主人公という、なかなかの異色作です。

 内容は、5つの短編からなる連作ミステリー。とはいっても、ミステリーには付きものの殺人事件など起こりません。ある書店のマドンナ店員が急にふさぎ込んでしまったのはなぜか? ある地方書店の廃業に隠された事情とは? といった、駆け出し営業マンの井辻くんが日々の仕事の中で遭遇する、ちょっとした謎がテーマになっています。

 それぞれがおもしろいのですが、間にはさまれている「業務日誌」風の短い章が、出版営業という仕事を生き生きと伝えていて、またおもしろい。その最後の章で、営業マン同士が飲み会で、自社本の初版部数を明かしてしまうところがあります。

 「いいのだろうかと、ずいぶん戸惑った。でも現実に、教えてもらった数を参考にして、自分のところから出す本の初版部数を検討する。」

 ライバル社として競争しながらも、協力できるところは協力する、というわけです。

 今を去ること22年。入社したばかりの研修で、「部数は絶対、社外秘!」とたたき込まれたことを思い出します。ぼくの入った出版社の主力商品は学習辞典で、いわゆる「競合商品」だからそうだったのかもしれませんが……。

 「このご時世、売れる本はただそれだけで素晴らしい。互いに協力し合い、ベストセラーを一冊でも多く生み出していかないとね」

 そんな営業マンたちが働いている世界が、なんとも魅力的に見えたのでした。

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