« ものを贈る喜び | トップページ | 厳しい冬をしのぐ場所 »

2012年12月20日 (木)

トイレというメディア

Photo

 お腹の調子がよくなくて、とある駅ビルのお手洗いに駆け込んだときのこと。

 用を足して、ほっと胸をなでおろしてふと前を見ると、写真のような張り紙がしてありました。「禁煙 NO SMOKING」だけではもの足りなかったのでしょうか。特に、真ん中の「音響警報が鳴動する感知器が」の行だけ強調してあるあたり、なかなか個性あふれる書きっぷりであります。

 たしかに、ランプが点滅するだけの警報というのもあるのでしょうが、ふつうは「警報」といえば、「音響」を伴うもの。「鳴動」もなんてことない熟語のようですが、実は日常生活で使うチャンスはあまりありません。「大山鳴動ネズミ一匹」ということわざを思い出させます。

 そして、それだけの言い回しをしておいて、あくまでそれは「感知器」にすぎない、という立場。要するに「警報器」と言ってしまえば済むところを、これだけのことばを駆使して表現しているわけです。

 わかりにくい日本語だなあ。

 と思ったものの、いや、待てよ、別に日本語は常にわかりやすくないとダメだ、とは限りません。トイレの個室というのは、この地球上で、考えごとには最も適した場所。ぼくと同じように、便器に腰掛けお尻は丸出しの状態で、この張り紙をぼんやり眺める人は、ゴマンといるに違いありません。

 とすれば、これくらいの言い回しの方が、かえって効果的なのかもしれないなあ。

 そんなことを考えながらトイレを出ると、人びとが足早に行き交うそこは、まぎれもなく俗世間。じっくり向き合ってくれる読者に恵まれたトイレというメディアが、ちょっとうらやましくなったりしたものでした。

|

« ものを贈る喜び | トップページ | 厳しい冬をしのぐ場所 »

漢字・ことば」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/1639146/48393057

この記事へのトラックバック一覧です: トイレというメディア:

« ものを贈る喜び | トップページ | 厳しい冬をしのぐ場所 »