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2012年11月 4日 (日)

昔は必ずあったもの

 2、3か月前のこと。ある印刷会社の人と、次のような会話を交わしたことがありました。

「円満字さん、シケイ、要りませんか? うちもいよいよ全部処分するんですよ」
「ぼくはねえ、シケイは持ってるんですよ。会社にいたころに、捨てられそうになってたのを持って帰ったことがあるんです」

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 シケイとは、「紙型」のこと。活版印刷では、鉛でできた活字を組み合わせてページを作ります。そうやってできあがった大きなハンコのようなものを、重版に備えてそのまま保存しておくのは、重たいし、かさばります。そこで、紙をどろどろに溶かした紙粘土のようなものを押し当てて、型を取って保存していました。それが、紙型です。重版の際には、溶かした鉛をここに流し込んで、また大きなハンコのようなものを再生すればいい、というわけです。

 とはいっても、ぼく自身は、紙型を扱う仕事をした経験はありません。編集者として働き始めた1991年には、紙型はおろか、活字さえ使わない電算写植の時代になっていました。ただ、入社する直前に「紙型庫」をつぶして会議室にした、という話を聞いたことがあります。

 活版印刷はなやかなりし時代、紙型は出版社の生命線でした。火災などで商品がすべて焼けてしまっても、紙型さえ残っていれば、すぐに商品の供給を再開することができます。しかし、紙型までなくなってしまうと、事業の再興にはかなりの時間と資金を要します。そこで、出版社や印刷所は、必ずといっていいほど、耐火式のりっぱな紙型庫を持っていたのでした。

 「紙型はね、何度も使うと少しずつ縮むんだよ。だから、重版を繰り返すと、版面がちょっとだけ小さくなるんだ」

 そんなことをなつかしそうに語ってくださった大先輩が、いらっしゃったものでした。

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