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2012年11月

2012年11月26日 (月)

自由になると悩みも深い

 ページをどのようにレイアウトするか?

 それは、出版編集という仕事に常につきまとっている問題です。どれくらいの大きさの文字を、どれくらいの行間で、何字×何行でレイアウトするのか? 写真や図版をどれくらいの大きさでどの位置に入れるのか? それらによって、見やすさ読みやすさはもちろん、ぱっと見の印象がずいぶん変わってきます。レイアウトは売れ行きを左右するといっても、過言ではないでしょう。

 文庫本や新書判のような小さな本では、狭い紙面をできる限り広くみせるような工夫が必要になります。いわゆる単行本のサイズ、四六判やA5判では、写真や図版の大きさが実はむずかしくて、半ページとってしまうとたいていは間延びした感じになり、4分の1ページだと窮屈になる。その間のうまい具合のところを探しながらレイアウトする、といった按配でしょうか。

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 もっと大きなB5判とかA4判になると、のびのびと自由にレイアウトできるのはいいのですが、たとえば文章と写真1点だけ、というのでは1ページが埋まらない。そこで、いろんな要素を突っ込んでいかなくてはならないのが、頭の悩ませどころです。

 さて、洋泉社ムック『楽しい漢字』は、A4判変型、112ページで定価980円と、なかなかのお買い得。ぼくも、「漢和辞典大解剖」と「漢字の誤読は恥ずべきことか?」の2本、合わせて12ページ分を書かせていただきました。

 テーマが漢字というと、どうしても文字ばっかりになりがちです。A4判の天地を10ミリ縮めただけの広い紙面を、いったいどうやって埋めていけばいいのだろう? そんなことを考えながら原稿を書いていたのですが、はたして、その仕上がりやいかに!?

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2012年11月22日 (木)

変幻自在のお酉さま

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 練馬の大鳥神社で酉の市をやっていたので、出かけていって縁起物の熊手を買ってきました。練馬区随一の繁華街(?)のど真ん中にあるのですが、焼き鳥だのクレープだの餡餅だのケバブだのと夜店がいっぱい立ち並んで、なかなか立派なお祭りです。

 酉の市といえば、浅草の鷲(おおとり)神社のものが有名。商売繁盛の神様というと「えべっさん」の印象が強いのは、ぼくが兵庫県西宮市の出身だからでしょう。ただ、それを差し引いても、「お酉さま」については、関西よりも関東の方が人気があるように感じていました。

 ところが、今回、買ってきた熊手の説明書きを読んで始めて知ったのですが、大鳥神社の本社は、大阪府の堺市にあるとのこと。そういえば、子どものころ、時刻表の路線図を見ていたら、阪和線に鳳(おおとり)駅というのがあったなあとか、堺出身の与謝野晶子の旧姓は鳳(ほう)だったなあとか、いろいろ思い出してハタと膝を打った次第です。

 それにしても、浅草の神社では「鷲」と書き、堺の地名では「鳳」と書き、もちろん一般的には「大鳥」とも書く。横綱白鵬の「鵬」も「おおとり」と読みますし、ほかにも「鴻」だって訓読みすれば「おおとり」です。1つのことばを書き表すのにこんなにいろいろな書き表し方があるのは、日本語ならではの現象でしょう。

 同じ「おおとり」であっても、使う漢字によってイメージは異なります。でも、だからといって、鷲神社と大鳥神社がけんかをした、という話は聞きません。あるときは繊細に、あるときはおおらかに。それが日本語の中での漢字の使い方だといえそうです。

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2012年11月19日 (月)

玄関前で座り込み!

 秋も深まり、朝夕の冷え込みが身にしみて感じられるようになってきた、先月の終わりごろのこと。

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 わが家の軒先に居候をしているフリーランスのネコくん。彼女にも、少しでも秋風を避けてもらおうと、えさを玄関の中に置くようにしてみました。すると、さすがにえさの力は絶大で、これまで、家の中にはなかなか入ろうとしなかったのに、意外とすなおに入って来ました。

 ただ、ドアを閉じようとすると、食べている途中でもいやがって出て行ってしまいます。これでは、彼女が食事をしている間ずっと、ドアを開けたまま、手で押さえておかなくてはなりません。

 そこで、玄関のドアにストッパーを付けてみました。こちらがほかの用事をしていても、ネコくんは安心して食事をしています。食事が終わったころに玄関に行って、ひとしきりなでてあげる。そうして、満足すると、彼女はさっさと外に出て行きます。これは便利です。

 ただ、味をしめたのですね。困ったことに、ネコくんは、満足するまで玄関に座り込みすることを覚えたのです。近ごろでは、たいてい2〜3回、おかわりをせしめて、舌なめずりをしながら出て行きます。

 途中でドアを閉めようとしさえすれば、警戒して自分から出て行くのはわかっているのですが、なんだか追い出しているようで、悪い気がして忍びない。こちらのそんな性格を見すかしているのでしょう。長いときは小一時間、玄関先で粘っていきます。

 冬が近づいてきて、細く開けたドアからも、冷たい風が吹き込むようになりました。小一時間も開けっ放しだと、さすがに家の中も冷え込みます。ドアを閉めてもいやがらないように、せいぜい、ネコくんの信頼を得る努力をするしかありません。
 それには、やっぱり、えさをたくさんあげるしかないのでしょうねえ。

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2012年11月13日 (火)

素足で奥へと分け入ると…

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 今年の5月のお話。

 ちょっとした用事があって、上野公園を歩いていたら、ふと目にとまった看板が1つ。道端の木と木の間に張り渡したロープにぶら下げてあるのですが、書かれている文字は2つだけ。「土禁」。

 「出入り禁止」を「出禁」というのは、ときどき耳にします。しかし、恥ずかしながら、そのときまで「土禁」ということばに出会ったことはありませんでした。でも、だからといって皆目、手がかりがないわけではないのが、漢字のありがたいところ。目にした瞬間に「土足禁止」の略ではないかと、見当がつきました。

 でも、ここは公園の中とはいえ、吹きさらしの屋外。言ってしまえば、ちょっとした「藪の中」のような場所です。「立ち入り禁止」ならばわかるけれど、ここで「土足禁止」と言われてもなあ。

 かといって、「土」で始まるふさわしいことばは、ほかにはちょっと思いつかないし……

 家に帰って調べてみると、「土禁」はやっぱり「土足禁止」の略語。国語辞典にはまだあまり載っていないようですが、特に「車の運転席を土禁にしている」というふうな場面で、よく使われるようです。

 それはそうとして、では、上野公園のあの「土禁」はなんだったのでしょう? ロープの手前できちんと靴を脱いで、素足で奥へと踏み込んでいくと、何かとんでもなくいいことでも待ち構えていたのだったりして。

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2012年11月 4日 (日)

昔は必ずあったもの

 2、3か月前のこと。ある印刷会社の人と、次のような会話を交わしたことがありました。

「円満字さん、シケイ、要りませんか? うちもいよいよ全部処分するんですよ」
「ぼくはねえ、シケイは持ってるんですよ。会社にいたころに、捨てられそうになってたのを持って帰ったことがあるんです」

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 シケイとは、「紙型」のこと。活版印刷では、鉛でできた活字を組み合わせてページを作ります。そうやってできあがった大きなハンコのようなものを、重版に備えてそのまま保存しておくのは、重たいし、かさばります。そこで、紙をどろどろに溶かした紙粘土のようなものを押し当てて、型を取って保存していました。それが、紙型です。重版の際には、溶かした鉛をここに流し込んで、また大きなハンコのようなものを再生すればいい、というわけです。

 とはいっても、ぼく自身は、紙型を扱う仕事をした経験はありません。編集者として働き始めた1991年には、紙型はおろか、活字さえ使わない電算写植の時代になっていました。ただ、入社する直前に「紙型庫」をつぶして会議室にした、という話を聞いたことがあります。

 活版印刷はなやかなりし時代、紙型は出版社の生命線でした。火災などで商品がすべて焼けてしまっても、紙型さえ残っていれば、すぐに商品の供給を再開することができます。しかし、紙型までなくなってしまうと、事業の再興にはかなりの時間と資金を要します。そこで、出版社や印刷所は、必ずといっていいほど、耐火式のりっぱな紙型庫を持っていたのでした。

 「紙型はね、何度も使うと少しずつ縮むんだよ。だから、重版を繰り返すと、版面がちょっとだけ小さくなるんだ」

 そんなことをなつかしそうに語ってくださった大先輩が、いらっしゃったものでした。

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