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2012年9月10日 (月)

ガラスの板に未来が見える

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 これは、「写植の文字盤」と呼ばれるもの。出版社に勤めていたころ、倉庫の大掃除を手伝ったときに、捨てられそうになっていたのをもらい受けたものです。

 「写植」とは、「写真植字」の略。活版印刷で活字を並べていくことを「植字」と呼ぶのですが、写植では、写真のように印画紙に文字を焼き付けることで、それを行います。原稿の文字を印画紙に1つ1つ焼き付けていってページを作り、それを印刷用の原版として使うわけです。

 その文字のもとになるのが、文字盤。この中から1文字を選び、その部分を通して印画紙に光を当てると、文字の部分だけ光が当たり、化学反応によってそこが黒くなる、という原理です。

 お見せしている文字盤は、漢和辞典用に特別にあつらえられたもの。かなり特殊な漢字ばかりが収まった小さなもので、こういう文字を印字するときには、これを差し替えながら使っていたとのこと。ふだん使う標準の文字盤はもっと大きなもので、2000字以上が並んでいたらしいですが、残念ながら、ぼくは現物を見たことはありません。

 写植が便利だったのは、倍率を変えることで、同じ文字盤の文字からさまざまな大きさの文字を印字できた点でしょう。活版印刷で文字の大きさを変えるには、それぞれの大きさの活字が必要でした。また、変形レンズを用いることで長体・平体・斜体も簡単に可能となり、印刷文字の表現の幅が格段に広がったのも、写植の功績の1つでしょう。

 1980年代になると電算写植機が登場。文字盤から文字を探して直接、焼き付ける手動写植機は姿を消していきます。現在、隆盛を誇っているのは、パソコン上で組版を行うDTPですが、少なくとも日本語の組版においては、電算写植機の技術がなければ、DTPの実現はもっと苦労をしたことでしょう。

 そう考えると、この写植の文字盤も現在につながっているのだ、と感じられて、ちょっと厳粛な気分になります。

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