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2012年8月 1日 (水)

なつかしの大衆食堂

 阪急電車三宮駅の西出口を出てセンター街へと向かう途中に、太平閣という中華屋さんがあります。今では、小さなスタンドみたいなお店で豚まんを売っているだけですが、ぼくが子どものころは、食券を買って中に入ると、広い店内は10人掛けくらいの長テーブルと長椅子とでいっぱいで、ニンニクやショウガの匂いがわっと襲いかかってくる、それはそれは立派な大衆食堂でありました。

 ここに連れて行ってもらうと、ぼくはなぜだか、天津飯を食べることに決まっていたものでした。とはいっても、直接、天津飯を注文するのではなく、丼いっぱいの白いごはんの上に、別に頼んだかに玉を載せる。なぜだか、そういうスタイルでありました。

 そして、そのかに玉のことを、父は「フーヨーハイ」と呼んでいました。さらには、「中国人は、しゃれた名前を料理に付けとるもんやなあ」と何度もくり返し言っていたものです。

 「フーヨーハイ」とは「フヨウハイ」のことで、漢字で書くと「芙蓉蟹」となるのを知ったのは、高校生くらいのころだったでしょうか。同じころ、吉川英治の『三国志』を読んでいて劉備の妻「芙蓉」に出会い、「芙蓉」が美しい花の名前であることを知りました。その花を意識して眺めるようになったのは、大学生になって東京へと出てきてからのこと。そして、それが中国語で指す「芙蓉」とは実は異なる花であることを知ったのは、社会人になって漢和辞典の仕事をするようになってからのことでした。

Photo

 そんなわけで、今でも、ご近所さんのお庭に芙蓉の花が咲くと、「フーヨーハイ」のことを思い出します。太平閣の「芙蓉蟹」のあんは、ケチャップを使った赤い色でもなく、おしょうゆを使った茶色い色でもなく、白に近い透明な色でした。どの色であっても、芙蓉の花のさわやかなピンクとは違うのですけれど……。

 ちなみに、太平閣が今でも売っている豚まんは、味オンチのぼくでもわかるくらいに、めちゃくちゃおいしいです。たまに三宮へ行くと、東京の拙宅まで、クール宅急便で送ってもらっています。

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