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2012年7月 8日 (日)

看板にいつわりなし!?

 あるお医者さんの前を通りかかったら、看板に大きく「麻酔科標榜医(ひょうぼうい)」と書いてあって、ちょっとびっくりしました。こんなことばも、あるんですね。

 「榜」とは掲示板のようなものを指す漢字で、「標榜」とは掲示板に示すこと、つまり、みんなにわかるようにはっきりと示すことを表します。そこで、「麻酔科標榜医」さんは、「私は麻酔科のお医者さんですよ!」と文字通り看板に掲げているわけで、まことに親切なお医者さんだといえましょう。

 ところが、「内科標榜医」とか「胃腸科標榜医」とか「心臓外科標榜医」といった看板は、ついぞ見かけたことがありません。ぼくが「麻酔科標榜医」に引っ掛かってしまったのは、まずはこの点に原因があるのでしょう。

 調べてみると、日本のお医者さんは、医師免許さえ持っていれば、何科の看板を掲げてもいいそうです。ただ、麻酔科に関してだけは、別途、資格を取得する必要があるらしくて、つまり、「麻酔科」を「標榜」する資格というものがあるのです。そこで、「外科」や「レントゲン科」や「診療内科」などには「標榜医」はいないのに、「麻酔科標榜医」だけは存在する、ということになるようです。

 これで納得、といきたいところですが、ぼくの中ではまだ、なんとなく落ち着かないところがあります。

 「標榜」ということばは、辞書を引けばたしかに「公にはっきり示す」という意味だと書いてあります。ただ、このことばにはなんとなく「表向き」というニュアンスがつきまとうような気がするのですが、いかがでしょうか? 「自然保護を標榜する業界団体」とか、「報道の自由を標榜するメディア」とか、「愛妻家を標榜する男」とか……。

 「榜」という見慣れない漢字を使った字面が大げさに感じられて、そういうニュアンスを生むのでしょうか? そこで、「麻酔科標榜医」なんて看板に出会ってしまうと、ちょっとびっくりしてしまうのです。

 このことばにそんな印象を持っているのは、ぼくだけなのかもしれません。けれども、現実に使われていることばの意味と、辞書に載っていることばの意味との間には、ときには微妙なズレがあるようにも感じるのも、事実なのです。

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