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2012年6月25日 (月)

すべてを紫に染めたい!

Photo  ある本を買うきっかけには、いろいろあることでしょう。内容で買う場合や、好きな著者だから買う場合は正統な買い方ですが、ときには、タイトル買い、装丁買いだってあるものです。

 細川呉港さんの『紫の花伝書 花だいこんを伝えた人々』(2012年、集広舎/中国書店、本体2200円)は、ぼくにとっては、タイトル買いと装丁買いの合わせ技でノックアウトされた1冊でした。春になると、線路脇の草むらを明るく彩るハナダイコン。毎年、電車の窓からあの景色を眺めるのを楽しみにしている人ならば、手に取らずにはいられないでしょう。

 ハナダイコンは別名を諸葛菜といって、中国原産だということは知っていました。でも、それが戦後になって日本に広まったものだとは、知りませんでした。著者は、その広がりの過程を丹念に追いかけます。そして、浮かび上がってくる、あの戦争の時代を生きた5人の人生。それぞれが、中国の大地でさまざまな体験をし、そこに咲く美しい花を、日本にも広めたいと願ったのです。特に、多くのページが割かれている花田歌さんの生涯には、感動的なものがあります。

 それにしても、あの時代の日本人にとって、中国の大地とはそんなにも身近に広がっていたのか、とつくづく思いました。そして、現在の両国の間のさまざまな〝距離〟が思われます。ぼく自身、中国の大地を踏んだことはありませんし、目下のところ、踏む機会もなさそうなことも。

 この本の〝本〟としての特徴は、ハナダイコンの紫色で全体が統一されていること。タイトルの文字色をはじめとする装丁の基調色がそう。帯の紙色もそう。見返しも薄紫。花ぎれもしおりも紫色。そして、本文の文字色まで紫だという念の入れようです。

 罫線を多用した本文の組み方は、どうしても紙面を狭く見せてしまうので、ぼくの好みからは言わせてもらうと、ちょっと。そんなことも含めて、中身から外見まで、〝本〟というものを丸ごと考えさせてくれました。

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