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2012年6月

2012年6月29日 (金)

スズメが教えてくれたこと

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 父のところへ行く途中、梅雨空の下を散歩がてら歩いていたら、並木道にスズメが何匹も舞い降りて、なにかをついばんでいるのに出会いました。落ちているのは、小さく赤黒くて、毛玉みたいにちょっとぽわぽわとした実。

 見上げてみると、濃く茂った緑の葉っぱの合間に、ダーク・レッドのつぶつぶのアクセント。あっちの枝にもこっちの枝にも、いっぱいいっぱい成っています。

 なんという名前の木なのだろう?

 そう思って、写真を撮って持ち帰り、調べてみると、ヤマモモの実なのだとか。あまずっぱくて、そのままでも食べられるけれど、ジャムやジュースにもするそうな。

 ヤマモモは別名で「楊梅(ようばい)」というとのこと。そこで思い出したのは、8世紀の中国の大詩人、李白の「梁園吟(りょうえんぎん)」の一節。

  玉盤の楊梅 君が為に設け
  呉塩(ごえん)は花の如く 白雪よりも皎(しろ)
  塩を持ち酒を把(と)りて 但(た)だ之(これ)を飲まん

 宝玉でできたお皿にヤマモモの実を盛り、呉の国で特産の真っ白な塩を添える。これを肴にお酒を飲むというのが、伝説の酒豪、李白さんのスタイル。荘魯迅先生の『李白と杜甫 漂泊の生涯』(大修館書店、2007)では、この詩句をふまえて、李白と杜甫が飲み屋さんで出会い、李白が楊梅と呉塩を注文するシーンがあります。

 これが、あの楊梅だったのですねえ。

 ジャムやジュースもいいけれど、お酒のおつまみにも合う。スズメさんたちも、なかなか舌が肥えているようです。

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2012年6月25日 (月)

すべてを紫に染めたい!

Photo  ある本を買うきっかけには、いろいろあることでしょう。内容で買う場合や、好きな著者だから買う場合は正統な買い方ですが、ときには、タイトル買い、装丁買いだってあるものです。

 細川呉港さんの『紫の花伝書 花だいこんを伝えた人々』(2012年、集広舎/中国書店、本体2200円)は、ぼくにとっては、タイトル買いと装丁買いの合わせ技でノックアウトされた1冊でした。春になると、線路脇の草むらを明るく彩るハナダイコン。毎年、電車の窓からあの景色を眺めるのを楽しみにしている人ならば、手に取らずにはいられないでしょう。

 ハナダイコンは別名を諸葛菜といって、中国原産だということは知っていました。でも、それが戦後になって日本に広まったものだとは、知りませんでした。著者は、その広がりの過程を丹念に追いかけます。そして、浮かび上がってくる、あの戦争の時代を生きた5人の人生。それぞれが、中国の大地でさまざまな体験をし、そこに咲く美しい花を、日本にも広めたいと願ったのです。特に、多くのページが割かれている花田歌さんの生涯には、感動的なものがあります。

 それにしても、あの時代の日本人にとって、中国の大地とはそんなにも身近に広がっていたのか、とつくづく思いました。そして、現在の両国の間のさまざまな〝距離〟が思われます。ぼく自身、中国の大地を踏んだことはありませんし、目下のところ、踏む機会もなさそうなことも。

 この本の〝本〟としての特徴は、ハナダイコンの紫色で全体が統一されていること。タイトルの文字色をはじめとする装丁の基調色がそう。帯の紙色もそう。見返しも薄紫。花ぎれもしおりも紫色。そして、本文の文字色まで紫だという念の入れようです。

 罫線を多用した本文の組み方は、どうしても紙面を狭く見せてしまうので、ぼくの好みからは言わせてもらうと、ちょっと。そんなことも含めて、中身から外見まで、〝本〟というものを丸ごと考えさせてくれました。

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2012年6月16日 (土)

梅雨の季節の思いこみ

 いよいよ、本格的な梅雨入り。週間天気予報でずらずらずらっと雨マークが並んでいるのは、なかなかの壮観。じめじめとして嫌な季節ではありますが、雨だれの音は、どこか心を落ち着かせるもの。自宅で仕事をするようになって、その魅力を改めて感じるようになりました。

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 さてさて、月並みですが、梅雨といえばアジサイの花。ちょっとご近所を歩き回るだけで、いろいろなアジサイが目を楽しませてくれます。バレーボールみたいに大きく咲いて、重たそうでどこかものうげなアジサイもきれいですが、花をまわりにはべらせて、真ん中でなにやらごちゃごちゃと宴会でもやっているかのようなガクアジサイの素朴な風情も、捨てがたいです。

 アジサイの「花」といいますが、花びらのように見えているのは実は花びらではなく、萼なのだとか。これを「装飾花」といい、本物の花は、真ん中の丸く小さな部分。ガクアジサイの場合は、宴会をやっているところには装飾花はなく、まわりにはべっている連中だけが装飾花を咲かせるとのこと。

 そんなこともあって、ガクアジサイを漢字で書くと「萼紫陽花」だとばかり思っていましたが、最近、正しくは「額紫陽花」だと知りました。まわりの装飾花を額縁に見立てた命名だとか。なるほど。宴会に見立てるよりは、よっぽど風情がありますね。

 それにしても、思いこみとはおそろしいものです。

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2012年6月 9日 (土)

通り過ぎていく時代

Photo  携帯が突然、壊れました。

 一昨日、家に帰って取り出したら電源が切れていたので、おかしいなと思って電源ボタンを押したのですが、一向に反応なし。充電しようとしても、反応なし。携帯屋さんに持っていったら、「完全な故障ですね、修理に出すと2週間はかかるかと」。あっけないものです。

 この携帯を使い初めて早4年。特に思い入れがあるわけではないのですが、いざお役御免となると、ちょっとさみしくなります。改めて見つめ直してみると、汚れ具合、塗装のはげ具合が痛々しい。知らないうちに、酷使していたんだね。ごめんなさい。今まで、ほんとうにありがとう。

 というわけで機種交換と相成りました。ただ、世間を風靡しているスマートフォンには、今のところ、なぜだか一向に興味が湧かない。電車の中でスマホをいじっている人はたしかにたのしそうですが、ぼくとしてはぼんやりしている方がもっとたのしいわけでして……

 そこで、店員さんに「ふつうの携帯で」と申し上げましたら、選択肢として示されたのは3つだけ。そのうち1つは、いわゆる「簡単携帯」で、もう1つは充電プラグの形状に問題があって、結局、たった1つの可能性をそのまま受け入れるしかなかったのでした。

 とはいえ、新しい携帯は、それはそれで結構お気に入りのデザインではあるのですが。

 この携帯が壊れたときには、ぼくもスマートフォンに乗り換えることになるのでしょうねえ。いやいや、そのころには、スマートフォンの時代がすでに終わっている、なんてことになっているのかもしれません。

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2012年6月 3日 (日)

横組みスリップ登場!

 去年の秋ごろから玄関脇にフリーランス猫くんが出没するようになって、我が家ではネコブームが続いています。というわけで、ネットで注文したのが町田康さんの『猫とあほんだら』(講談社、2011)。真っ白な仮フランス装の装丁がまぶしい、なかなかにおしゃれな本であります。

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 ただ、届いてみてちょっとびっくりしたのは、ネット書店にありがちな、挟み込まれたままになっているスリップ。横組みのスリップというのは、初めて見ました。これもおしゃれの一貫なのでしょうか。

 スリップは本に対して縦方向に挟み込むわけですから、文字も縦に組んであるのが当たり前。とはいえ、実際にスリップを使うのは、本がお客さんの手に渡ったあと。書店員さんが売り上げの集計や補充注文の発注に使う段階では、縦だろうが横だろうがたいした違いはありません。横組みのスリップというのも、そういう意味ではアリなのかな、と。ただし、縦組みと横組みが入り交じっていたら、ちょっと使いにくいかもなあ。

 このスリップについては、びっくりしたことがもう1つありました。それは、
*当カードの書名・著者名は製品本体と字体が異なることがございます
とわざわざ下線まで引いて、断り書きがしてあること。スリップを扱う書店員さんから、「著者の字体が違うんですけど?」と問い合わせが来ることがあるのでしょうか。それとも、最近はスリップがこうやって読者の手に渡ることもあるわけで、熱心な読者からの指摘が増えているのでしょうか?

 固有名詞の漢字の字体については、いろいろと気を配るものです。とはいえ、それにもTPOというものがあって、仲間内でしか見ないメモ書きであれば、細かい字体の違いまで気にすることはないでしょう。だからこそ、講談社さんのスリップでも、いちいち外字を作って対応するところまではなさっていないわけで。

 そこに「字体が異なることがございます」と書く必要が出てきたというのは、スリップの役割が変わったのか、字体のTPOが変わったのか? いろいろと考えさせられるのでした。

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