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2012年5月11日 (金)

いくら売れてももうからない?

 最近、『出版興亡五十年』(1953年)という本を読んでいるのですが、これがなかなかにおもしろい。著者は小川菊松といって、誠文堂新光社の創業者。1902(明治35)年にこの業界で働くようになってから50年、見聞きしてきた出版業界のさまざまな裏話が、いっぱいに詰まっています。もっとも、どうやらちょっと話を大げさにするクセがあるようなので、眉に唾をつけながら読まないといけないのですが……

 たとえば、明治のベストセラー、徳冨蘆花(とくとみ・ろか)の『不如帰(ほととぎす)』は原稿料一括払いの契約だったので、売れても売れても出版元の民友社がもうかるばかり。ただ、100版に達したらたっぷりお礼をしましょう、という話だったのだが、そのため99版のときには、当時としては破格の2万部を刷ったとか。

 岩波文庫『不如帰』には「第百版不如帰の巻首に」という序文が付いていますが、その背後にはこんな事情が本当にあったのでしょうか?

 民友社といえば兄、徳富蘇峰(そほう)の経営。「御兄弟の間は、その後必ずしも円満ではなかった。その原因が何であるかは知らないが御本人同志が知らぬ間の、部下のこうした弄策は、両先生間のもつれに、一層油を注ぐ結果とならぬでもあるまい。」

 また、ごていねいに「本書出版費の計算実態」なんてのも載っていて、組版代がページあたり本文250円、年表と索引は360円などと書いてあるのを見ると、物価の上昇と比べて、このあたりの費用はさほど上がっていないのかも、などと思ったりもします。

 そんな本書で、珍しいページを発見したので、写真でお目にかけましょう。

Photo

 何が珍しいかというと、ページの上に横組みで掲げてある「ハシラ」と呼ばれる見出しが、右ページなのに左寄せになっていること。ハシラは右ページなら右寄せ、左ページなら左寄せにするのがふつうです。本書でも、この節だけがこうなっているので、校了直前に何か事情があってページの左右が逆になったのに、ハシラの位置を直し忘れてそのまま校了になってしまったのでしょうか。

 いろいろな意味で、読書のたのしみを満喫させていただいております。

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