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2012年4月 4日 (水)

嵐の夜の猫

 昨日の夜、部屋でパソコンに向かって仕事とも遊びともつかぬことをしていると、玄関の脇で突然、パリンと何かが割れる音がした。何かと思って、玄関から外へ出ようとする。その瞬間、びゅうっと音をたてて駆け抜ける突風に、ドアを持って行かれそうになった。

 我が家の玄関脇には、フリーランスの猫くんが間借りしている。見ると、この春の嵐に彼女もさすがに夜の冒険はあきらめて、暗がりの丸い影と化している。そのそばに、いつもえさを入れておくお皿が、風に吹かれて転がって、きれいに2つに割れていた。

 割れたお皿を片付けながら、この嵐では猫くんだって恐いだろう、今夜は我が家の中へとご招待しようか、と考えた。そこで、玄関のドアを吹き飛ばされないように細めに開けて、こっちに来るかい? と声を掛けてみる。猫くんはのっそりと起き上がった。そうしている間にも風は吹いて、雨粒が眼鏡のレンズをぬらしていく。

 ドアのところまできた彼女は、ニャアと鳴きはするものの、しかし、中に入ろうとはしない。どうやら、猫族特有のあの好奇心を発揮しただけのようだ。

 今夜は嵐だから、おうちの中の方が安全だよ。そう話しかけてみても、知らんぷり。そのうち、身を翻して我が家の前の道を横切り、お向かいさんの塀の向こうへと消えていった。軒下に間借りはしても、家の中にまで入ろうという気はないらしい。

 こんな嵐の中、大丈夫だろうか……

 深夜、雨風がだいぶ収まってからまた外に出てみる。とたんに、黒い影が足元にまとわりついた。今夜は特別だから、と思って、新しいお皿にえさを入れて出してあげた。お腹が空いていたのか、すぐさまがっつき始める。

 そばにしゃがんで、その姿を見ながら考える。フリーランスの猫には、フリーランスの猫なりの生き方があるんだろうなあ。お互い、その生き方でうまく世の中を渡っていけますように。

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