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2012年4月 9日 (月)

花よりダンゴ

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 春の陽気に誘われて、近所の川べりまで散歩に出かけた。満開のソメイヨシノはもちろん美しいけれど、気に掛かったのは、脇っちょに咲いているハナニラの群れ。グリーンの葉っぱを背景に、真っ白な花びらが冴えわたっている。おしべの黄色も、いいアクセントだ。学生時代のぼくはこの清楚な花の名前を知らなくて、後輩の女の子に尋ねたら、「ニラの花ですけど……」って、びっくりしたような答えが返ってきたっけなあ。

 ニラを漢字で書くと「韮」。山梨県の韮崎とか、伊豆の韮山なんていう地名もあって、日常生活でもそれなりに使われることがある。ただ、この字を漢和辞典で調べようと思って「艹(くさかんむり)」のところを探しても、見つからないかもしれない。多くの漢和辞典では、「韮」の部首は「艹」ではなく、「韭(にら)」となっているからである。

 「韭」はもともとニラを表す漢字で、「韮」はそれが植物であることをはっきりさせるために、後から「艹」を付け加えて作られた漢字らしい。そう言われてみると、細い葉っぱがピンピンと伸びているようすが、「韭」の形に表れているような気がしないでもない。

 そこで、伝統的な漢和辞典では、「韮」の部首は「韭」とする。では、この部首にはほかにどんな漢字があるのかというと、ふつうに使うようなものはほとんどない。典型的な弱小部首であって、言ってみれば、ほとんど「韭」「韮」の2文字のために存在しているような部首なのだ。

 わざわざ「韭」なんていう部首を立てるなんて、昔の中国の人びとはよっぽどニラが好きだったんだろうなあ!

 でもそれは、花が清楚で美しいからではないんだろう。だって、ニラといえば、やっぱりあの独得の香り。食材として、あるいは薬用として重宝されてきたからこそ、「韭」は部首となっているんだろう。現実的に役立つものに高い価値を置く。それもまた、中国文明らしい気がする。

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