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2012年3月 8日 (木)

ヨアライとは何ぞや?

 テレビを付けっぱなしにしたまま、本を読んでいたら、TOKIOの国分太一さんが、ヨアライ、ヨアライと何度も言っているのが聞こえてきた。目をやるとすぐに画面は切り替わってしまったのだが、どうやら食器洗浄機用の洗剤のCMだったらしい。ヨアライとは「予洗い」のことで、洗浄機で洗う前に、食器をあらかじめ簡単に洗っておくことをいうようだ。

 そんなことばがあるんだ……、と思っていくつか国語辞典を調べてみたけれど、案の定、載っていない。ただ、ネットで検索すると、意外にもたくさんヒットする。食器洗いだけでなく、洗濯だとかお化粧、あるいは髪を洗うときにも使うことばらしい。

 漢字の「予」を音読みで読んで、そのあとに「洗い」という訓読みを続けるのは、いわゆる「重箱読み」というやつだが、このことばの場合はいかにも座りが悪い。「下洗い」とか「前洗い」とかいっておく方が落ち着くのになあ、と感じるのは、ぼくが漢字に関する仕事をしているからだろうか。

 考えてみると、この「予」の使い方はちょっと特殊だ。「予告」「予言」「予約」「予防」「予定」「予算」「予習」などなどの「予」は、どれも「あらかじめ」という意味だから、「予洗い」の「予」と同じように思える。だが、「予洗い」のあとには「本洗い」があるわけだが、「予告」や「予言」のあとに「本告」「本言」があるわけではない。「本番の前にとりあえずやっておく」という意味で「予」が使われる例というと、日常的に使われるところでは「予選」や「予鈴」、そして「予行演習」があるくらいか。

 そんなことを思いながら、ネット上の『大辞林』(三省堂)を見ていたら、「予洗」と書いてヨセンと読む熟語が見つかった。意味は「下洗いと同じ」だと書いてある。ヨアライは、この熟語から生まれたことばなのだろう。ヨセンと言われると「予選」がすぐに思い浮かんでしまうから、「洗」だけを訓読みにしたのかもしれない。

 たしかに、ヨセンよりはヨアライの方が伝わりやすいことばではある。ヨアライとは何ぞや? と思いつつも、たいていの人の頭の中には「予・洗い」という字が浮かぶからだ。

 それは、ぼくたちの頭が子どものころから長い時間をかけて、漢字にそういうふうに訓練されているということでもある。日本人の脳の力たるや、恐るべし、なのである。

(追記)その後、「予洗い」については続稿「ヨアライ再び…」を書きましたので、そちらもご覧ください。

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コメント

音読みと訓読みがくっついて一つの言葉に成ってるものがままあるが、このよあらい・・・聞き捨てならないです。
気分があまりよく有りません^^;

投稿: | 2012年4月 1日 (日) 19時14分

コメントありがとうございます。ヨアライ、気になる人が多いみたいですね。「首長」をクビチョウ、「代替」をダイガエと言っているのを初めて耳にしたときには、びっくりしたものでしたが……。世の流れなのかもしれません。

投稿: 円満字二郎 | 2012年4月 1日 (日) 20時27分

失礼申し上げます。
この「よあらい」、何度聞いても(聞かされても)、
なじめません。
話題になっていないのかな、と検索しましたらこちらに
たどりつきました。
同じように感じられている方がいらしてホッとしました
。ありがとうございました。

投稿: まん | 2012年8月 1日 (水) 08時28分

コメントありがとうございます。
1日に10人ぐらいの方が覗いてくださるささやかなブログですが、この記事のアクセスが一番多いです。ヨアライということば、気になる方が多いようですね。

投稿: 円満字二郎 | 2012年8月 1日 (水) 09時22分

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