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2012年2月 5日 (日)

ある図書館の貼り紙

 先日、ある図書館でこんな貼り紙を見た。「次の本を寄贈していただけませんか?」とタイトルが書いてあって、その下に10冊ほどのリストが付いている。この図書館、どんな本を求めているんだろう、と思って眺めてみると、一番上に名前があったのは、東川篤哉『謎解きはディナーのあとで2』。ほかにも、東野圭吾『麒麟の翼』とか、有川浩『県庁おもてなし課』、湊かなえ『夜行観覧車』、三浦しをん『舟を編む』などが挙がっている。いま話題の本ばかりだ。

 以前、新潮社の編集の方と話をしていたときに、「最近の図書館はケシカランと思いませんか?」という問いかけられたことがある。ベストセラーをたくさん購入して貸し出すから、本が売れなくて困る、とおっしゃるのである。

 ぼく自身は、編集者としても著者としても、初版3000部から4000部といった世界で生きてきた。全国の公共図書館の数は、3000を超える。各館1冊ずつなんて申しません! 図書館業界全体で500部でも売れてくれれば、商売としてはとてもありがたいのだ。だから、新潮社さんのそのお話は、そのときのぼくにはまったくピンと来なかった。

 ただ、こうやって、いまを時めくベストセラーぞろいの貼り紙を眺めていると、「なるほど」という気分になってくる。これらの本を、この図書館はすでに何冊も所蔵している。それでも、予約が多くて、読みたい人がその本を手にするまでに数か月から半年以上も待っていただくことになる。そこで、「寄贈していただけませんか?」ということになるのだろう。

 不要になった本を引き取り、読みたい人に貸し出す。それでは「タダのブックオフ」ではないか。いきどおる編集者の気持ちも、わかろうというものだ。

 ただ、なにごともスピーディになっているこの時代、数週間から半年も待ってでもある本を読みたい、と思ってもらえるというのは、すごいことだ、とも思う。そういう読者に恵まれた著者は、そして編集者は、幸せものだとも感じる。

 問題は、そういう方がお金を払ってまでその本を読もうと考えるには至っていない、というところにあるのだろう。お客さんに財布のひもをゆるませるというのは、いつでもどこでも、そんなに簡単なことではない。

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